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「分かりやすい表現」の技術

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講談社・ブルーバックス



全く新しい主張にビジネス各誌も紹介。
『週間東洋経済』2001年7月21日号(東洋経済新報社)
『NOMAプレスサービス』2001年7月号(日本経営協会)
『月刊・国語教育』2000年12月号(東京法令出版)
『Next One』2000年7月号(ベンチャーリンク社)
『Gainer』2000年5月号(光文社)

はじめに

私は自分の寿命を伸ばすために、この本を書きました。短気な私は、世の中にあふれる「分かりにくい表現」で、怒り心頭に発することが多いのです。これでは体が持ちません。機能豊富な新型電話機の取扱い説明書、道路標識、パソコンのマニュアルなど、例をあげれば切りがありません。読者のみなさんも分かりにくい説明、表示などに腹を立てることが多いのではないでしょうか。

1997年に、電話会社のNTTからナンバー・ディスプレイに関する「おたずね」のはがきが届きました。その解釈にとまどったことを覚えていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。私たちには、まったく耳慣れない「回線ごと非通知」か「通話ごと非通知」かを選んで欲しい、という趣旨でした。結果的には、NTTの趣旨が利用者には十分に伝わりませんでした。

その結果、ナンバー・ディスプレイのサービスが実際に始まってみると、さまざまな混乱が起こり、NTTはその収拾に追われました。新聞に謝罪広告を出したり、NTTは、事態収拾のために臨時の出費を強いられたわけです。

もし、事前調査のおたずねのはがきが、もう少し「分かりやすい」ものであったなら、NTTは、無駄な出費を回避することができたでしょう。このように「分かりにくい表現」は社会の無駄、不効率を生み出します。

世の中には、なぜこんなに「分かりにくい表現」が氾濫しているのだろうと常々、考えてきました。一つだけ思い当たるふしがあります。世界に誇る品質管理技術で成功した我が国は、物品の品質管理にはうるさい国です。しかし、情報伝達の技術、つまり表現の品質管理には、これまで注意が払われたり、体系的手法が検討されることがなかったのではないでしょうか。

もし、取扱い説明書、カタログ、道路標識、広告、講演、放送などに係わる全ての情報発信者が表現の品質管理を身につけることができたなら、私の胃袋が怒りでねじれる回数も減るのでは、と考えたのです。

もちろん、すでに、文章を書く人には「分かりやすい文章を書く技術」的なハウツー本があります。同様に、講演を行う人には、「分かりやすいプレゼンテーション」のためのハウツー本があります。また、マニュアルなど、取扱い説明書を分かりやすく書く技術も、それなりに確立しています。つまり業界ジャンル別には「分かりやすい表現」のノウハウがそれなりに蓄積しています。

こうした、業界別に蓄積してきた「分かりやすい表現」の技術にも、そのジャンルを超えた普遍的共通項があるはずです。そうした共通項から「分かりやすい表現」の純粋結晶を抽出できれば、表現の品質管理の重要なガイドライン(基準)になるでしょう。そこで「分かりやすい表現」のための普遍的共通項を一冊のコンパクトな本に整理することにしたのです。

第1章では、わたしたちの日常生活が、いかに「分かりにくい表現」に取り囲まれているかを再確認します。

●第2章では、「分かりやすい表現」を実現するために必要な、「分かりやすい」とは、そもそもどういうことなのか、を考えてみます。

●第3章では、いろいろな現実の事例から「分かりにくい表現」を生み出している犯人を追及します。発見した犯人から、私たちの仕事に役立ちそうなルールを導きだします。

第4章では、第3章で導きだした各ルールを一頁ごとにまとめました。私たちの実際の仕事に使いやすいように各ルールのチェック・ポイントも添えました。

この本をきっかけに「分かりやすい表現」に対する議論、認識が高まり、誤解、迷い、困惑などによる社会の無駄を追放する第一歩になれば、これ以上の喜びはありません。

平成11年03月



目次

第1章 「分かりにくい表現」がいっぱい!

 - 中央線は「直進」か「右へ」か? (東京駅地下での標示)
 - 横浜は直進か左折か? (道路標識)
 -「通話ごと非通知」?(NTTからのお知らせ)
 -「分かりにくい表現」の文化的背景
 - 小さい文字、早口、小声での講演
 - 合格発表の不思議
 - 格調高い法律条文
 - セミナーの無神経な日程表

第2章 「分かりやすい」とはどういうことか

 -「分かる」とはどういうことか
 - 分かった人と分からなかった人
 - 脳内整理棚のしくみ
 -「分かる」瞬間
 -「分ける」は「分かりやすい」の原点
 - たとえ話が分かりやすい理由
 - 抽象化の大切さ

第3章 「分かりにくい表現」の主犯たち

 犯人1 親切心の欠如
 犯人2 「受け手」のプロフィールの未定義
 犯人3 受け手の熱意の読み違い
 犯人4 大前提の説明洩れ
 犯人5 ガイドの欠如
 犯人6 複数解釈ができてしまう
 犯人7 情報のサイズ違反
 犯人8 欲張り
 犯人9 具体性に欠ける
 犯人10 重みづけの欠如
 犯人11 共通項でくくらない
 犯人12 相互関係を明示しない
 犯人13 視覚特性の無視
 犯人14 自然な発想に逆らう
 犯人15 受信順序を明示しない
 犯人16 直訳

第4章 「分かりやすい表現」のチェック・ポイント

 ルール1 おもてなしの心を持て
 ルール2 「受け手」のプロフィールを設定せよ
 ルール3 受け手の熱意を見極めよ
 ルール4 大前提の説明を忘れるな
 ルール5 まず全体地図を与え、その後、適宜現在地を確認させよ
 ルール6 複数解釈を許すな
 ルール7 情報のサイズ制限を守れ
 ルール8 欲張るな。場合によっては詳細を捨てよ
 ルール9 具体的な情報を示せ
 ルール10 情報に優先順位をつけよ
 ルール11 情報を共通項でくくれ
 ルール12 項目の相互関係を明示せよ
 ルール13 視覚特性(見やすさ)を重視せよ
 ルール14 自然発想に逆らうな
 ルール15 情報の受信順序を明示せよ
 ルール16 翻訳は「言葉」ではなく「意味」を訳せ

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By ふじさわこうじ